書類・設計の自動化を先に狙うのは、動かすたびに手元に残るものが違うからだ
#AI業務フロー再設計#開発の記録
現場の工事を自動化しても、できあがった建物は施主に渡る。私の手元には何も残らない。書類・設計を自動化すると、雛形が残る。次の案件はそこから始められる。使うほど精度が上がる。最初の一手を書類・設計に置いたのは、この差があるからだ。
工事を自動化しても、建物は施主に渡る
現場の工事が速くなったとき、私の手元に何が残るか。
コンクリートが打たれ、鉄骨が立つ。建物が完成すれば、施主に渡る。工程の記録も施工の写真も、施主のものになるか、現場の棚に積まれる。私が次の案件で使い回せる形では、戻ってこない。次の現場でも、また同じ手順から始まる。一件目の速さは、その一件の中で消える。
書類・設計は違う。発注書を自動化して一件分作れば、その副産物として雛形が手元に残る。目的は発注書を作ることだが、終わってみると次で使えるものができている。仕様書を整えれば、条件が似た案件に使い回せる。図面データができれば、近い設計をゼロからやり直さずに済む。
残る。積み重なる。次の精度が上がる。
私が今やっているのは、建設の内勤の業務フローをAIを使って再設計することだ。書類作成・指示管理・設計データの整備——建設業の内勤DXと呼ばれる領域——は、大手のDX投資からも取り残されたままだ。現場機械は自動化が進んでいる。内勤は、まだそうなっていない。これは現場の工事を速くすることとは、根本的に違う。
大手が超高層を取り続けるのは機械のせいではない
なぜ大手が超高層建築の仕事を取り続けるのか。長く考えていた問いだ。
機械がいいからではない。構造計算のデータを積み上げてきたからだ。超高層の骨格をどう組むか、どこに力をどう逃がすか。過去に手がけた建物の数だけ、設計の実績がある。そのデータがあるから、次の超高層を設計できる。持っていない会社には、仕事が来ない。
機械を買えば追いつくか。追いつかない。データは買えない。早く始めるしかない。
私が小型構造物の図面の仕事から始めたのも、この考えからだ。小型構造物とは、人が常時入らない構造物だ。点検のときだけ人が入る扉をつけて設計する。この扱いにすることで、建築確認の申請や建築士のライセンスの問題が外れる。始めやすい。一件こなすたびに、図面の雛形が手元に残る。
伊賀で読み違えた
実際に動いてみて、読み違えた。
伊賀の案件で、施主の動きが約1週間止まった。見積もりを持っていっても、判断に進まない。私は価格が問題だと読んでいた。
違った。
施主は、設置後の景観が頭の中で描けていなかった。構造物を置いたあと、その場所がどう見えるのか。それが見えないまま、判断を求められていた。
価格ではなかった。
今やろうとしているのは、現地の写真とドローンの映像にAI合成で完成後の絵を重ねて見せることだ。施主が止まった理由が価格ではなく景観だとわかったのは、この案件で詰まって初めてだった。この作業も、書類・設計側の仕事だ。次の案件でも使い回せる形で、私の手元に残る。
役員に話しても、技術の話は降りなかった
内勤の仕事を持って行って、失敗した経験がある。
最初は役員に説明した。通じなかった。返事はもらった。だが現場には何も降りていかなかった。技術の話は役員のところで止まった。
結局、現場の担当者に最初から説明し直した。話が通じた。仕事が動いた。
二度手間だった。
それ以降は、最初から現場の担当者に話している。現場の声を聞かない会社は消えていく。これは私の確信だ。現場が動かなければ、作った仕組みも積み上がらない。
私の手元に何が残るのか
一つ、整理しておく。
受発注の仕組みでは、発注データは各社の機械にそのまま保存する設計にした。外部のサーバーには置かない。建設の現場では、発注データを社外に出すことを嫌う判断が多い。使ってもらえない仕組みからは、何も積み上がらない。まず使ってもらえる形を選んだ。
では私の手元には何が残るのか。
雛形と仕組みだ。発注書の形、仕様書の作り方、AIで何を自動化するか、どの順序で案件を動かすか。これは複数の会社に展開できる。一社目で整えた仕組みが、二社目では最初から動く。三社目はさらに速くなる。1社目は10日、2社目以降は2日になった。各社のデータはその会社に残る。私の手元には、展開できる仕組みが残る。この二つは矛盾しない。
大手が構造計算のデータを積み上げてきた動きと、私の仕組みとでは種類が違う。だが向きは同じだ。積み上げたものが、次の案件を支える。
発注の仕組みを仕上げてから、投資家と話す
今向かっているのは、発注の仕組みの完成だ。残っているのは三つ。ウェブサイトのアドレスの取得、加工会社と施工会社の確定、発注書の雛形。ここが2週間で終われば、複数の会社に展開できる完成品が出る。
その先に、この仕組みを土台にして投資家と組む構想がある。ファンドとして成立させるには、売り切りではなく継続してお金が入る形が必要だ。発注の仕組みをサブスクやサブリースの形で運用することが、次の話になる。
順序がある。実績のない段階で大きな資金を求めると、言葉だけになる。書類・設計で積み上げた雛形と仕組みを、実際に複数社で30件動かした実績に変える。その数字を持って投資家と話す。この順序でなければ動かない。
書類・設計から入ることは、この順序の最初に立つことだ。雛形が積み上がるから展開できる。展開できるから数字が作れる。数字があるから投資家と話せる。最初の一手がここでなければ、この先はつながらない。
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